【2025年最新】厚生年金「扶養」完全ガイド:第3号被保険者のメリット・デメリットと手続き、年収の壁を徹底解説

年金

日本の公的年金制度は、国民年金を「1階部分」とし、その上に厚生年金が「2階部分」として積み上げられた二階建て構造になっています。この厚生年金には「扶養」という制度があり、特定の条件を満たす配偶者は「国民年金第3号被保険者」として位置づけられます。この記事では、厚生年金における扶養の概要と、第3号被保険者となるための手続き、さらにこの制度が持つメリット・デメリット、そして将来の議論について詳しく解説します。

厚生年金における扶養の対象者と条件

厚生年金における扶養とは、厚生年金保険や共済組合に加入し保険料を納付している人(「第2号被保険者」と呼ばれる会社員や公務員など)に扶養される配偶者のことを指します。第3号被保険者として認定されるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 対象者の範囲: 第3号被保険者になれるのは、第2号被保険者の配偶者に限定されます。健康保険の扶養では、一定の条件を満たした保険加入者と同一生計の親族なども扶養加入が可能ですが、国民年金第3号被保険者の制度は配偶者に限られているため注意が必要です。
  • 年齢要件: 20歳以上60歳未満であることが条件です.
  • 収入要件: 年間収入が130万円未満であることが原則です。ただし、60歳以上または障害厚生年金の受給対象となる障害者の場合は、年間収入180万円未満と緩和されます。この年間収入とは、過去の実績ではなく、扶養に該当する時点から将来1年間の見込み収入額を指します。加えて、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
    • 同居している場合: 収入が扶養している配偶者(被保険者)の収入の半分未満であること.
    • 別居している場合: 収入が扶養している配偶者からの仕送り額未満であること.

第3号被保険者の年金保険料について

第3号被保険者は、国民年金保険料を個別に納付する必要がありません。これは、扶養者である第2号被保険者が加入する厚生年金が、第3号被保険者の国民年金保険料を一括して負担する仕組みになっているためです。つまり、保険料を納めていなくても、年金額の算出においては保険料納付済期間として扱われることになります. これが第3号被保険者の最大のメリットと言えるでしょう.

一方で、国民年金には扶養制度が存在しないため、もし何らかの理由で扶養を外れ、第1号被保険者(自営業者や学生、無職の人など)となった場合には、自分で国民年金保険料を負担しなければなりません。なお、配偶者が第3号被保険者の資格を喪失したとしても、第2号被保険者自身の厚生年金保険料が変わることはありません。厚生年金保険料は、給与に基づいた「標準報酬月額」によって算定されるため、給与額に変動がなければ保険料も変わりません。

第3号被保険者のメリットとデメリット

メリット

  • 保険料負担なしで国民年金が受け取れる: 自身で保険料を支払うことなく、老後に国民年金を受給できます。20歳から60歳までの40年間第3号被保険者だった場合、40年間国民年金の保険料を納付した場合と同じとみなされます.
  • 障害基礎年金や遺族基礎年金の受給資格: 保険料を納付していなくても、要件を満たせば障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取ることができます.
  • 健康保険の扶養も同時に: 国民年金の第3号被保険者は、同時に健康保険の被扶養者にもなるため、医療を受けることができます.

デメリット

  • 将来受け取れる年金額は国民年金のみ: 他の年金(厚生年金)に加入できないため、将来受け取れる年金は国民年金のみとなり、他の被保険者資格と比べて給付額が少ない傾向にあります. 年金額を増やしたい場合は、確定拠出年金や個人年金保険などで別途備える必要があります.
  • 年金の「上乗せ給付」の対象外: 第2号被保険者と異なり、厚生年金部分の上乗せ給付がないため、老後に受け取れる年金額は配偶者よりも少なくなる点に注意が必要です.
  • 「年収の壁」と就労調整: 年収130万円の壁が、パート労働者の就労調整を促す要因になっていると言われています. 社会保険に加入して働くことで自身の厚生年金を増やせるにもかかわらず、扶養の範囲内で働くことを選択する人が多いのが実情です.
  • キャリア形成への影響: 労働時間の制限によりキャリア形成が進みにくく、配偶者が失業したり離婚したりした場合に、自身の年金保険料負担を求められるリスクがあります.

第3号被保険者となるための手続き

配偶者が厚生年金の扶養に入り、第3号被保険者となるためには、扶養者が勤務する事業所を通じて所定の手続きを行う必要があります.

具体的には、配偶者の勤務先に「国民年金第3号被保険者関係届」を提出します. この届出書には、第3号被保険者に「該当」するか「非該当」かを選択する欄があるため、「該当」を選択します. この関係届は、事業所を経由して管轄の年金事務所へ提出され、受理されると、それまで第1号被保険者だった場合は自動的にその資格を喪失し、第3号被保険者へと切り替わります. また、新たに健康保険の被保険者となった者に被扶養者がいる場合や被扶養者の追加があった場合、被保険者は事業主を経由して「被扶養者届」を日本年金機構へ提出します。

制度の将来と注意点

第3号被保険者制度については、長年にわたり「不公平だ」といった批判や、女性の社会進出を阻害しているのではないかという議論がなされています。2023年12月には、当時の厚生労働大臣が「廃止を含めて検討する」と明らかにしています。制度が廃止され、第1号被保険者と同額の保険料負担が必要となった場合、保険料を負担していなかった家庭に大きな影響を与える可能性があります。

届出漏れに注意:

第3号被保険者の届出が漏れていたため、実際には第1号被保険者であるにもかかわらず、第3号被保険者期間として年金記録が管理されているケース(記録の不整合期間)があります。このような届出漏れをそのままにしておくと、将来年金を請求する際に年金額が減額されたり、年金受給資格期間が不足して無年金者となる可能性もあります。日本年金機構では、不整合期間を有する方に対し、記録訂正を行っています。

まとめ

厚生年金における扶養制度は、第2号被保険者の配偶者が国民年金の保険料負担なく年金受給資格期間を確保できる重要な仕組みです。しかし、将来受け取れる年金額が限定されるなどのデメリットも存在します。制度の見直しも議論されており、自身のライフプランや働き方に応じて、制度の内容をよく理解し、適切な手続きを行うことが、将来の年金生活に備える上で非常に重要です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました